大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌地方裁判所 昭和53年(ワ)5050号 判決 1980年2月21日

原告

工藤義兼

被告

株式会社不二家

ほか一名

主文

被告らは各自原告に対し金一〇五一万〇三六四円及び内金九六一万〇三六四円に対する昭和五三年九月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを五分し、その三を被告の、その余を原告の負担とする。

この判決は、原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一申立

一  原告

1  被告らは各自原告に対し金一七四七万四一九三円及び内金一五九七万四一九三円に対する昭和五三年九月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  被告ら

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二主張

一  請求原因

1  事故の発生

原告は、昭和五一年一一月八日午前八時〇五分ころ、帯広市西五条南一九丁目先市道において横断歩道を歩行中、被告笹川運転の普通貨物自動車(札四四ネ九七二一号。以下、「被告車両」という)に衝突され、脳挫傷・右視神経損傷・顔面裂創・背部打撲の傷害を受けた。

2  責任原因

(一) 被告株式会社不二家(以下、「被告会社」という)は被告車両の保有者で、自己のために被告車両を運行の用に供していたものである。

(二) 被告笹川は自己の過失によつて本件事故を引起したものである。

3  損害

(一) 治療経過及び後遺症

原告は、右傷害治療のため、入通院したが、その結果、右視力・視野障害(眼前手動弁)、右上顎骨頬骨突起部陥凹等の後遺障害が残つた(昭和五二年一二月八日固定)。右障害は自賠法施行令別表所定の第七級に相当する。

(二) 原告が右後遺障害によつて被つた損害は次のとおりである。

(1) 逸失利益 金一五九九万四一九三円

原告は昭和五一年の事故当時五六歳(大正九年五月二〇日生)の健康な男子であつて、前記後遺障害により五六パーセントの労働能力を喪失したものであるから、事故が無ければ稼働しうべき六七歳までの一三二か月の逸失利益は、原告の事故前三か月の平均月収金二七万二〇〇〇円を基準とし月別複式ホフマン方式計算法により年五分の割合による中間利息を控除すると、現価金一五九九万四一九三円となる。

(2) 慰藉料 金五〇二万円

(3) 弁護士費用 金一五〇万円

原告は原告訴訟代理人に本訴の追行を委任し、権利実現のため金一五〇万円を必要とする。

(三) 損害の填補

原告は、昭和五三年二月一五日、被告らから本件事故に関する損害賠償として金五〇四万円の支払を受けた。

4  よつて、原告は被告らに対し、損害賠償として金一七四七万四一九三円及び弁護士費用相当額を除く内金一五九七万四一九三円に対する本件訴状送達の日の翌日である昭和五三年九月二七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう求める。

二  請求原因に対する認否(被告両名)

1  第1項、第2項(一)、(二)は認める。

2  第3項(一)のうち、原告が傷害治療のため入通院した結果、右視力障害(眼前手動弁)の後遺障害を残したこと及び右症状固定時は認めるが、右後遺障害が自賠法施行令別表所定の第七級に相当することは否認する。右後遺障害は右別表所定の第八級に相当するものである。

3  第3項(二)は争う。なお、(2)の慰藉料としては金二〇〇万円が相当である。また、(3)のうち訴訟委任の点は認める。

第三証拠〔略〕

理由

一  請求原因第1項(事故の発生)及び第2項の(一)、(二)(責任原因)の各事実は当事者間に争いがないから、被告会社は自賠法三条により、被告笹川は民法七〇九条により、いずれも原告が本件事故によつて被つた損害を賠償すべき責任がある。

二  そこで損害につき検討する。

1  原告が本件事故により受けた傷害治療のため入通院した結果右視力障害(眼前手動弁)を残した(昭和五二年一二月八日固定)ことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第五、第六号証、乙第一号証の一ないし七、証人桑名満の証言及び原告本人の供述によれば、原告は、本件事故による後遺障害として、右のほか右視野障害、脊柱の運動制限のない背部痛、右上顎骨・頬骨突起部の陥凹、右眼窩上部より眼瞼部に至る線状瘢痕(三二ミリメートル)の症状を残したこと、右症状についても昭和五二年一二月八日症状が固定したこと、自賠責保険関係では右症状の存在を前提として後遺障害について検討した結果、これを自賠法施行令別表所定の第八級第一号にのみ核当すると判定したことの各事実が認められ、これを覆すに足る証拠はない。そこで右事実に前記争いのない事実及び弁論の全趣旨を勘案するならば、結局、原告には自賠法施行令別表所定の第八級に相当する後遺障害が残り、これによつて原告は昭和五二年一二月以降労働能力を四五パーセント喪失せしめられたものと認めるのが相当である。

2(一)  成立に争いのない甲第一号証、原告本人の供述及び弁論の全趣旨によれば、原告は大正九年五月二〇日生れの男子で本件事故当時健康上の問題は無かつたと認められるから、前項の認定事実にかんがみると、五七歳から六七歳までの一〇年間における毎年の男子労働者の平均賃金相当額の四五パーセントをもつて後遺障害による逸失利益と認めるのが相当である。昭和五二年における労働大臣官房統計情報部作成「賃金構造基本統計調査報告」第一巻第一表による産業計・企業規模計・学歴計の五五ないし五九歳の男子労働者の平均給与月額は金一八万六〇〇〇円、年間賞与その他の特別給与額は金六〇万七一〇〇円であるから、これらを基礎とし、ホフマン方式計算法(係数の有効数字五桁)により年五分の割合による中間利息を控除して計算すると、逸失利益額は別紙のとおり金一〇一五万〇三六四円(円未満切捨)と認められる。

(二)  次に、前記のとおりの原告の後遺障害の内容、程度にかんがみると、原告が右障害によつて被る精神的苦痛を慰藉するには金四五〇万円が相当であると認められる。

3  原告が、昭和五三年二月一五日、被告らから本件事故に関する損害賠償として金五〇四万円の支払を受けたことは当事者間に争いがない。

4  しからば、原告は被告らに対し、本件事故に関する損害賠償として金九六一万〇三六四円を請求しうべきところ、原告が原告訴訟代理人に本訴の追行を委任したことは当事者間に争いがなく、本件事案の内容、審理の経過及び認容額にてらすと、賠償を求め得る弁護士費用相当額は金九〇万円と認められる。

三  以上の事実によれば、原告の本訴請求のうち被告らに対し金一〇五一万〇三六四円及び弁護士費用を除く内金九六一万〇三六四円に対する本件訴状送達の日の翌日である昭和五三年九月二七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用につき民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 寺田逸郎)

別紙

(186,000×12+607,100)×7.9449×0.45=10,150,364

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例